「CECIL McBEEが全店閉店する」という先日のニュースを聞いて、
心のどこかがすぽっと抜け落ちてしまったような、寂しさと懐かしさに一緒に包まれるような、
そんな気持ちになった人はどれくらいいたでしょうか。
CECIL McBEEの服を着ていた、買っていた、好きだった、憧れだった…
幅広い世代に支持されていたブランドの閉店について、今回はお話ししようと思います。
「CECIL McBEE」というブランド
CECIL McBEEの設立は1987年。
株式会社ジャパンイマジネーションによるブランド設立で、
現在のブランドコンセプトは「今の私にちょうどいい」という文言になっています。
いつの時代も流行を取り入れ、お洒落に敏感な若者がトレンドファッションを楽しめるような服やコーディネートを提案してくれていました。
過去には浜崎あゆみ、倖田來未、西野カナなど、
その時代を彩ってきた歌姫たちがCECIL McBEEを愛用している・ファンであることを公言し、それが若者たちの間で共有され、常に注目され続けていました。
そんな歌姫たちのことが好きでCECIL McBEEというブランドを知った、という方も多いのではないでしょうか?
渋谷109に出店した1番店は、2000年から2013年にかけて館内で常に売り上げNo.1のブランドでした。
アムラーと呼ばれていた文化が徐々にギャル文化へと変貌を遂げ、浜崎あゆみというカリスマが登場し、
一気にギャル文化は加速していきました。
このことからも、1990年代から2000年代にかけ世間で社会現象となった
“ギャル”という文化をファッション面から支えてきたのは、確実にCECIL McBEEであったと考えられます。
設立当時はギャルブームがあったこともあり“セクシーカジュアル”をブランドのコンセプトに掲げていましたが、
2017年にいわゆる“モテ”を意識したフェミニン系に路線を変更し、
更に2019年の秋にもう一度リブランディングを行って現在の「今の私にちょうどいい」というコンセプトになりました。
ここ何年か、店舗の前を通った時にわたしは「昔とイメージが変わったな~」と思うことが多かったのですが、
この2回のリブランディングがその理由だったようです。
そして2020年7月、ギャル文化の衰退とコロナ騒動による業績不振を理由とした全店閉店、事実上の「ブランドの終了」を発表しました。
年内の11月を目途に店舗を全て閉店するとのことです。
一つの時代の終わり
わたしとみんなとCECIL McBEE
「CECIL McBEEが全店閉店する」というニュースを聞いたあの夕方、「えっ?!」と思わず声を出して驚いた人も少なくはないと思います。
わたしもその一人でした。
Twitterのタイムラインに流れてきたその情報に反応していたのは、
かつてのギャル文化全盛期を憧れの眼差しで見ていた人からリアルタイムで過ごしてきた人までという、幅広い年齢層の女の子たちでした。
そしてみんなのつぶやきは「昔お世話になった」「よく着ていた」
「小学生の時に知ってからずっと憧れていた」「初めて自分で服を買ったのを思い出す」
「みんな着ていたし好きだった」といったものばかりでした。
ショッパーと呼ばれるブランドのショップ袋を集めていた、学校で使っていた…そんな人も沢山いましたね。
わたしがこのブランドの存在を知ったのは小学生の時でした。
クラスメイトと交換したプロフィール帳の「好きなブランドは?」という項目に、「最近はCECIL McBEEが好き♡」と可愛い字で書いてあったのです。
なぜその事を今でも鮮明に覚えているのかは分かりませんが、
その数年後駅ビルへ行った際に初めてCECIL McBEEの文字を見つけて「あ、このブランドだ」と思っていたのをとてもよく覚えています。
アラサーが抱く“ギャル文化”への憧れ
これをお読みの方に、いわゆるアラサーと呼ばれる方は多くいるかと思います。わたしもその一人です。
さて、ではアラサーの皆様に質問です。
小学生の頃に見た高校生のお姉さんたちのことを、どんな風に覚えていますか?
当時読んでいた漫画や雑誌に、どんな人たちがどんな風に映っていましたか?
わたしの答えは「かわいいギャルのお姉さんがいっぱいいた」の一択です。
当時流行っていた漫画「GALS!(著・藤井みほな/出版・集英社)」のキャラクターや、
テレビに映る女子高生が皆短いスカートにルーズソックスを合わせ、ネイビーにブルーグレーの持ち手が付いたスクールバックを肩から掛け、
派手な長い爪と濃いメイクでお洒落をして、ハイビスカスの模様や飾りに囲まれて元気に笑う姿がとても印象に残っています。
あとは何より、歌姫・浜崎あゆみの存在です。
当時小学生だったわたしは、大きくなったらギャルになりたい!と漠然と思っていましたし、
母におねだりして花の飾りがついた厚底のサンダルを買ってもらったりしていました。
どうしてもルーズソックスを買ってもらいたくて、しまむらで駄々をこね続けたこともありましたね。
ルーズソックスが流行っていなかった自分自身の高校生時代も、「小悪魔ageha」を時々買って読んでいましたし、
「Popteen」や「egg」なんかもありましたね。
勿論雑誌の中に出てくるブランドにはCECIL McBEEの名前がありました。
皆さんの中にも、わたしと似たような感覚を持っている方は少なくはないと思います。
もう少し可愛い系に寄るにしても、いわゆる“ギャル”と呼ばれる女の子であった過去を持つ人、憧れていた人、好きな人…
そういった方は多いでしょう。
結局わたしは憧れていた人まででしたが、一度もきちんと通らなかった道というのはいつまで経っても眩しく羨ましく見えるものです。
アラサーになった今でも、時代に逆行するように自分のスタイルを貫き続けるギャルを見ると「かわいい!」と真っ先に思ってしまいます。
「わたしも可愛くなりたい」を叶える場所
街を歩くギャルのお姉さんを見た女の子たちが「わたしもあんな風にお洒落をしたい」「あんな風に可愛い服を着たい」と思った時、
一度はCECIL McBEEのお店に足を踏み入れたと思います。
皆が聖地と思っていたであろう渋谷109の店舗なんて、「絶対にいつか一度は」と思った人がたくさんいらしたのでは?
先程「結局わたしは憧れていた人まででした」と書きましたが、時々店舗を訪れては買い物をしていました。
全身や普段のお洒落のスタイルを全てギャル系にすることはなくても、例えばトップスだけギャルっぽいものを着るとか、
気分を変えたい日用にワンピースを買うとか、普段の自分のスタイルに今ギャル界隈で流行っているアイテムを取り入れるとか。
当時のブランドコンセプト自体が「セクシーカジュアル」なだけあって、
ギャル系ブランドの中ではベーシックなデザインが多かったのも初心者が買いやすかった理由のひとつかもしれません。
今思い返してみれば、そんな風に「ギャルになりたかったわたし」という願望を、わたしなりに叶えていたように思います。
もちろん、全身CECIL McBEEで揃えていたとか、お正月の福袋の為に並んだとか、行きつけだった店舗での思い出だとか、
それぞれに色んな思い出があるでしょう。
福袋の行列は毎年ニュース番組で取り上げられていた印象があります。
女の子の数だけあった「わたしも可愛くなりたい」を、沢山叶えてくれた場所だった。
ちゃんとギャルになれなかったわたしでも、そんな風に思っています。
「ブレないあたし」より「モテるわたし」
話は少し飛びますが、自分が大学生の頃の女性アーティストの流行りといえば、もっぱらアイドルでした。
少し前の時代に一世を風靡した安室奈美恵、浜崎あゆみ、倖田來未のような可愛くも強いセクシーな女性より、
もっと普通で大人しくて可愛い、そんな女の子像が流行っていました。
露出の多いギャルよりも清楚でかわいらしい女の子の方がいいと、段々世の中全体の風潮がそうなっていった記憶があります。
ギャル文化をファッション面から牽引し続けたCECIL McBEEの売り上げが下がり始めたのもこの頃からですし、前述にある「小悪魔ageha」や「egg」などのギャル雑誌が廃刊になったのもちょうどこの頃です。
「ギャルが可愛い」「ギャルに憧れる」という時代は、分かりやすく終わりに近づいていきました。
周囲に媚びず己を貫くギャルの在り方より、異性から自然にモテることをお洒落に組み込んだ在り方が流行でしたし、
今もその流行は続いています。
そしてこの頃からちらほらと、「アラサーが青春を共にしたブランドの終了」のニュースを聞くようになりました。
それはひとつのファッションジャンルに限った話ではなく、「ブレないあたし」を楽しむ手助けをしてくれていたブランドの多くがその対象でした。
時代の変化とコロナ渦の中をどう生き抜くか
コロナ渦でのお洒落
外出自粛の今、「外に出る為の新しい服はいらない」という意見は非常に多いです。
しかしその一方で「外に出られないからこそ好きな服を買う」という人も多くいます。
買い物自体がストレス発散であるのも事実ですが、外出の回数が減っているかので通勤中だけでも自分の好きな服を着たい、
家でも可愛い服に囲まれて幸せを感じたい、という理由でいつもより派手な服を買う人も多いようですね。
そうなると人は服を買う時に何を重視するのでしょう。
値段や機能性よりも、各ブランドのオリジナリティ溢れるデザインや色使いにポイントを置く人も多いのではないでしょうか?
各ブランドが今競うように出しているオリジナルマスクも、その指標のひとつになり得るのではないかと思います。
流行かオリジナリティか
CECIL McBEE閉店の主な理由はコロナ騒動とここ数年の業績不振による売上低下です。
冒頭にも上記にもあるように、“ギャル文化”の衰退がブランドにとっての痛手だったことは
2017年と2019年のリブランディングの様子からも明らかです。
時代による客数の減少が大きかったのは前提ですが、リブランディングしてから店舗の前を通った時の「あれ?こんな感じだったっけ?」
という違和感は、消費者のわがままを承知で言わせて頂くと、少し寂しいものがありました。
当時憧れていたブランドが持つオリジナリティが消えてしまうというのは、ブランドの終了と同じくらい寂しいものがあります。
しかし「ギャルが可愛い」という風潮が前ほど大々的でなものではないのも事実です。
ブランド自体を残すなら時代の流行を何かしらの形で上手く取り入れなければ売上は立たないし、流行だけに流されてしまえば固定のファンはつかなくなるでしょう。
上手くバランスを取って生き残っていければそれが一番なのですが、作り手と買い手の意図同士が最初からバチっとハマるのもまた難しい話です。
ましてやこんなご時世です、服を買うぞ!という意思がなければ服屋に足を運ぶこともないし、オンラインショップのページを開くこともないですよね。
そうなると、ブランドの信頼というものは「他にはないオリジナリティ」という部分になってくるのではないのだろうか?と一個人としては思わざるを得ない訳です。
わざわざブランドのホームページを開いて商品をチェックして買いたいと思わせるだけの力がなければ、今商品は売れていかないですよね。
ファッションのトレンドは取り入れても、“世間の流行”は取り入れない。
そういった強気な姿勢も、もしかしたらブランド存続の為には必要だったりするのかもしれません。
まとめ
時代の流れや社会現象に、時には逆らえないこともあります。
どうやったって綺麗事でビジネスを語ることは出来ませんし、売上が立たなければどんな会社でも潰れます。
流行は巡るし、しばらくはギャルが流行の真ん中にいることもないと思います。
それでもひとつの時代を築いたブランドが終了するという寂しさは理屈だけでどうにか出来るものではありませんし、
またその寂しさを感じる出来事がこれからあるかもしれません。
そうなってしまったらもういち消費者のわたしに出来ることはありませんが、せめてそのブランドが在ったことや好きだったことはずっと忘れたくはないものです。
いつまでも忘れることが出来ないあの眩しさは、それぞれの青春そのものです。
ある日引き出しの奥から大好きだったブランドのショッパーが出てきたら、「懐かしい!」と言って同世代の友人たちとSNSで共有してみるのもこれからの時代に沿ったわたしたちの在り方なのかもしれませんね。
朱墨 しがないコスメオタクの初心者ライターです。「自分らしく、自由に楽しく」がモットーです。よろしくお願いします。 詳細を見る
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肌らぶライター
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